動く部分がこわれるのや

自動車の仕事をしてる父親が、昔から言っていた。

例えば、ラジカセを買ってもらう時に、子供だった僕は、ボタンがいっぱい付いたヤツがいいと言ったのだけど、「あかん。壊れる。ましてや上にボタンがあったらホコリで、よけい壊れる。」と。
父親のせいかどうか、ものを買う時、特に電化製品を選ぶときは、なるべく動くところや物理的な部品が少ないものを選んできた。

大学生の頃、世の中に出始めたPDAを買ってみた。物理的な部品が少なくて「これだ！」と思ったのを覚えている。多分CASIO製でそれなりには使えたのだけど、何度調整してもスタイラスをあてた場所が認識される場処とずれる。保証期間も過ぎていたので、修理もしなかった。

それから、10年ほどたってジョブズがMacの画面の中から、誇らしげに僕に見せてくれた。申し訳ないが、「ずれないかな？」というのが第一印象だった。もちろん、そんなことは無く、技術の進歩か、当時修理に出さなかった僕が悪いのか、いずれにしても、世の中に「touch」がやってきた。

僕の手元に、「touch」が来たのは、その年の夏だった。電話はできないけど、カチッというだけのボタンがたった二つだけついていて、およそ「動く部分」がないものが。
もちろんずれることなんて無い。
ただソフトウェアキーボードが、いい感じでずれてくれてるのでは、と思ったことはあるけどね。